長年本棚に眠っていた愛読書や、大切に保管していたアルバム。久しぶりに手に取って開いてみた時、ページの隙間から、白っぽく半透明な、米粒より小さな虫が這い出してきたとしたら、それは「シミ(紙魚)」の幼虫かもしれません。成虫になると銀色に輝く鱗粉で覆われるシミですが、卵から孵化したばかりの幼虫や、脱皮した直後の個体は、白く柔らかい姿をしています。彼らは、成虫と同様に、私たちの家の中で静かに、しかし確実に被害をもたらす厄介な害虫です。シミは、その名の通り、暗く湿度の高い場所を好んで生息します。空気の流れが滞りがちな本棚の奥や、衣類を詰め込んだ押し入れ、長期間放置された段ボール箱の中などは、彼らにとって最高の繁殖場所となります。そして、彼らの主食は、デンプン質やタンパク質です。本で言えば、紙そのものであるセルロースや、製本に使われる糊、表紙の装丁などを好んで食害します。被害にあったページは、表面が不規則な形にかじられ、地図のような食害痕が残ります。衣類であれば、レーヨンなどの化学繊維や、食べこぼしや汗のシミが付着した部分を好んで食べ、小さな穴を開ける原因となります。シミの幼虫を発見したということは、その周辺が彼らにとって繁殖に適した環境になっているという証拠です。つまり、目に見える一匹の背後には、さらに多くの仲間や、まだ孵化していない卵が潜んでいる可能性が高いのです。対策の基本は、成虫と同様に「除湿」と「清掃」です。まず、発生場所の湿度を下げるため、定期的な換気や除湿機の使用を徹底します。本棚や押し入れは、物を詰め込みすぎず、空気の通り道を作ってあげることが重要です。そして、溜まったホコリは彼らの餌や隠れ家となるため、掃除機で念入りに吸い取り、その後、固く絞った布で拭き上げます。大切な本や衣類を守るためには、市販の防虫剤を適切に設置することも有効です。特に、衣替えや大掃除の際には、収納場所を一度空にして徹底的に清掃し、新しい防虫剤を設置する習慣をつけましょう。日々の地道な環境管理こそが、静かなる侵略者からあなたの思い出と財産を守るための、最も確実な方法なのです。
本や衣類を守れ!白っぽい害虫、シミ(紙魚)の幼虫対策