釣り餌や熱帯魚の餌として、人間にとっては利用価値のある生き物「赤虫」。しかし、彼らの本当の価値は、人間による利用の側面だけでは測れません。実は、この小さな赤い虫は、川や池、湖といった水辺の生態系において、なくてはならない重要な役割を担う「キープレイヤー」なのです。赤虫の最も重要な役割の一つが、水底の「分解者」としての働きです。赤虫は、水底に沈んだ枯れた植物や生物の死骸、排泄物などが細かくなった「デトリタス」を主な餌としています。これらを食べ、分解することで、有機物を無機物へと戻し、栄養塩として植物プランクトンなどが再利用できる形にする、いわば水の世界の「掃除屋」です。もし赤虫がいなくなれば、水底には有機物がヘドロのように堆積し、水質は著しく悪化してしまうでしょう。彼らの地道な活動が、水の透明度を保ち、水環境の健全性を維持しているのです。そしてもう一つ、赤虫は「食物連鎖の土台」としての極めて重要な役割を担っています。赤虫は、その豊富な栄養価と膨大な数から、多くの水生生物にとって不可欠な食料源となっています。フナやコイ、ワカサギといった魚類はもちろん、トンボの幼虫であるヤゴや、ゲンゴロウといった水生昆虫、さらにはカエルなどの両生類まで、数多くの生き物が赤虫を食べて命を繋いでいます。彼らが羽化してユスリカになれば、今度は鳥やクモ、コウモリといった陸上の生物たちの貴重な餌となります。つまり、赤虫という存在は、水中の生態系と陸上の生態系とを繋ぐ、重要な架け橋でもあるのです。赤虫の数や種類は、その水域の豊かさを示すバロメーターにもなります。彼らは、ただの餌や、不快なユスリカの幼虫というだけではありません。水質を浄化し、多くの生き物の命を支える、生態系という精巧なシステムの根底を支える、縁の下の力持ちなのです。
ただの餌じゃない!生態系を支える赤虫の重要な役割