「ゲジゲジみたいな虫」という言葉で、最も危険な誤解を生むのが、ゲジと「ムカデ」の混同です。両者は同じ多足類で、一見すると似ているため、区別がつかないまま対処してしまうケースが後を絶ちません。しかし、その危険度は天と地ほども違い、この二者を見分ける知識は、自らの身の安全を守る上で絶対に不可欠です。まず、最も分かりやすい見分け方のポイントは「脚の長さと生え方」です。ゲジは、胴体に対して不釣り合いなほど細く長い脚が、まるで体から放射状に広がるように生えています。一方、ムカデの脚は比較的短く、がっしりとしており、各体節から綺麗に一対ずつ、胴体の真横から生えています。上から見た時に、胴体よりも脚が大きくはみ出して見えるのがゲジ、胴体に沿ってコンパクトに脚がまとまっているのがムカデ、と覚えると良いでしょう。次に、「体の形と色」も重要な判断材料です。ゲジの体は灰色がかった茶色で、やや丸みを帯びており、寸詰まりな印象を受けます。対して、ムカデの体は赤褐色や黒色で、明らかに平たく、長く伸びています。重厚感があり、見るからに強固な外骨格を持っているのがムカデの特徴です。そして、「動きの速さ」も決定的です。ゲジは、驚異的なスピードで壁や天井さえも立体的に走り回ります。その動きは俊敏そのものです。一方、ムカデも決して遅くはありませんが、地面を這うように、体を波打たせながらウネウネと進みます。ゲジのような電光石火の速さはありません。もし、家の中で遭遇した虫が、平たくて脚が短く、ウネウネと進むタイプであったなら、それは益虫のゲジではありません。強力な毒を持つ、非常に危険な害虫「ムカデ」です。絶対に素手で触ろうとしたり、不用意に近づいたりしてはいけません。十分な距離を保ち、殺虫剤や熱湯などを用いて、確実かつ安全に駆除する必要があります。この見分け方を知っているかどうかが、激しい痛みを伴う被害に遭うか否かの分かれ道となるのです。
ゲジとは違う!本当に危険な害虫「ムカデ」の見分け方