あれは、うだるように暑い夏の夜のことでした。網戸にしていた窓から入ってきたのか、読書をしている私の首筋に、何かが止まる気配がしました。特に気にも留めず、無意識に手でパッと払いのけたのです。その瞬間、チリっとした微かな痛みを感じましたが、蚊にでも刺されたのだろうと、すぐに忘れてしまいました。しかし、本当の恐怖はその翌朝にやってきました。鏡を見て、私は息を呑みました。昨夜払いのけた首筋に、まるで定規で引いたかのように真っ直ぐな、赤いみみず腫れができていたのです。しかも、その線の上には、大小の水ぶくれがいくつも連なっており、見た目にも痛々しい状態でした。触れると、まるで火傷をしたかのようなヒリヒリとした激痛が走ります。何が起こったのか分からずパニックになりながらインターネットで調べ、ようやく「やけど虫」の仕業だと突き止めました。昨夜、私が無意識に潰してしまった小さな虫の体液が、このような惨状を引き起こしたのです。すぐに皮膚科へ駆け込み、医師からアオバアリガタハネカクシによる接触皮膚炎だと診断されました。処方された強力なステロイド軟膏を塗り、ガーゼで保護する日々が始まりました。最初の数日間は、痛みと痒みで夜も眠れないほどでした。水ぶくれは日に日に大きくなり、いつ破れるかと気が気ではありません。服が擦れるだけで激痛が走り、日常生活にも大きな支障をきたしました。一週間ほど経つと、水ぶくれが自然に破れてかさぶたになり、痛みも少しずつ和らいできましたが、治りかけの猛烈な痒みという新たな試練が待っていました。結局、完全にきれいな肌に戻るまでには、一ヶ月近くかかったと思います。あの小さな虫が持つ毒の恐ろしさを、私は身をもって体験しました。この経験以来、夏場に虫が体に止まっても、決して手で潰さないと心に固く誓っています。
あの激痛と水ぶくれ!やけど虫被害の体験談