ユスリカとの戦いにおいて、発生源対策と並行して絶対に行わなければならないのが、成虫を家の中に一匹たりとも侵入させないための「物理的な防衛策」です。ユスリカは、その習性上、どうしても私たちの家に引き寄せられてしまいます。その最大の理由が、彼らが持つ「正の走光性」、つまり光に集まるという性質です。夜間、暗闇の中で煌々と輝く家は、彼らにとって砂漠のオアシスのように魅力的に映り、その光を目指して一斉に集まってくるのです。この習性を理解した上で、家の守りを固めることが重要となります。まず、最も基本的な防衛ラインが「網戸」です。網戸が破れていたり、サッシとの間に隙間ができていたりすれば、それはユスリカにとって「どうぞお入りください」と書かれた招待状と同じです。シーズン前に必ず家中の網戸を点検し、小さな穴でも専用の補修シールで塞ぎましょう。ユスリカは体が非常に小さいため、一般的な網戸の網目(18メッシュ程度)を通り抜けてしまうこともあります。もし可能であれば、より網目の細かい(24メッシュ以上)の網戸に張り替えると、侵入防止効果は格段に高まります。また、網戸用の虫除けスプレーを定期的に吹き付けておけば、網戸自体をバリアにすることができます。次に、光による誘引を最小限に抑える工夫です。夜間は、不要な部屋の電気は消し、窓には遮光性の高いカーテンを引くことを徹底しましょう。特に、玄関灯や庭の照明は、ユスリカを家に呼び寄せる最大の原因となります。これを、虫が反応しにくい波長の光を出す「防虫用」の電球や、紫外線をほとんど放出しない「LED照明」に交換するだけで、劇的に虫が集まらなくなります。これは、初期投資はかかりますが、長期的に見れば非常に効果の高い対策です.最後に、換気扇や通気口、エアコンの配管の隙間といった、見落としがちな侵入経路も忘れてはなりません。これらの場所には、専用の防虫フィルターを貼るなどして、物理的に侵入口を塞ぎましょう。網戸、照明、隙間。この三つの防御壁を完璧に構築することが、あなたの家をユスリ蚊の侵略から守る、難攻不落の要塞へと変えるのです。
ユスリカを家に入れない完璧な防衛術