築三十年の木造住宅に住むAさんの事例は、作り始めの蜂の巣への正しい対処法を示す好例です。五月の連休中、Aさんは二階の軒下に、直径四センチほどの逆さまの傘のような形をした蜂の巣があるのを発見しました。蜂の種類はアシナガバチのようで、一匹の女王蜂が熱心に巣の穴を覗き込んでいる様子が見て取れました。Aさんは、以前住んでいた家で蜂の巣を放置してしまい、最終的に業者の手を借りて大掛かりな駆除を行った苦い経験があったため、今回は早急に自力で壊すことを決断しました。まずAさんが行ったのは、徹底的な情報収集と道具の準備です。ドラッグストアで「プロ仕様」と銘打たれた、ピレスロイド系成分を含む長距離噴霧型の蜂専用スプレーを二本購入しました。次に、夕食後の午後八時、あたりが完全に暗くなった頃に作業を開始しました。服装は、蜂の針を通しにくい厚手のウィンドブレーカーと、隙間のない登山用のズボン、そして頭には首まで覆うことができる防虫ネット付きの帽子を着用しました。足元は長靴を履き、ズボンの裾を中に入れてテープで固定するという念の入れようでした。作業現場には、レンズに赤いセロファンを被せた懐中電灯を用意し、光で蜂を刺激しないよう配慮しました。Aさんは脚立を設置し、作り始めの巣から約三メートルの距離を保ちながら、スプレーのノズルを巣に向けました。深呼吸をしてから一気に噴射を開始すると、強力な薬剤の霧が軒下を包み込み、女王蜂は反撃する間もなく地面に落下しました。Aさんはそのまま数十秒間噴霧を続け、巣の内部まで薬剤を浸透させました。翌朝、地面に落ちている蜂の死骸を確認し、長いトングを使って巣を壊して剥がし取り、二重にしたポリ袋に入れて処分しました。仕上げに、巣があった場所とその周辺に、忌避成分が含まれたスプレーを多めに吹き付け、作業を完了しました。Aさんの成功の要因は、蜂が本格的に活動を開始する前の五月という時期を選んだこと、そして蜂が動かない夜間に万全の装備で臨んだことにあります。この事例は、適切な準備と冷静な実行力さえあれば、家庭での作り始めの蜂の巣駆除は決して不可能ではないことを証明しています。その後、Aさんの家の軒下に蜂が戻ってくることはなく、平穏な夏を過ごすことができたそうです。